成年後見
はじめに
平成17年の5月、埼玉県のある町で、高齢の姉妹が悪質リフォーム業者によって、全財産を失うという事件が発覚しました。この姉妹は認知症であった事が、報道によって明らかにされています。この事件以後、全国各地で同様の事件が、ぞくぞくと発覚しています。
しかし、もし成年後見制度を利用していれば、一人暮らしの高齢者や、認知症高齢者を狙ったこのような事件は、回避することができたと言われています。
成年後見制度は、様々な場面で、高齢者や障害者の生活や権利を、守ることができるのです。
(ちなみに、未成年者を後見する制度は、「未成年後見制度」です。)
成人すれば、自分のことは自分で判断し、その責任も自分で負わなければなりません。
しかし、認知症や知的障害、精神障害の方など、すべてを自分の判断で行うことができない人たちもいます。
成年後見制度は、病気や事故などによって、判断能力の低下した方を支援する制度です。
成年後見制度は、大きく二つに、分かれます!
誤解を恐れずに、きわめて簡単に云うと、家庭裁判所が成年後見人等を選任する制度です。
※ご本人の判断能力が、既に病気や事故によって、低下や喪失してしまっており、四親等内の親族などが家庭裁判所へ所定の申立てをすることで、後見人等が選任されます。
誤解を恐れずに、きわめて簡単に言うと、ご自分で後見人と後見の内容を、決めておく制度です。
※ご自分の判断力がしっかりしているうちに、信頼できる方を後見人予定者として、「任意後見契約」を結ぶことになります。そして、将来、病気や事故によって、判断能力の低下や喪失が起こった際、一定の手続きを経て、この契約が発効します。
※成年後見制度の根本理念には、「自己決定の尊重」という考え方があります。この理念をもっとも体現しているのが、任意後見制度です。
後見人の主な仕事
- ご本人に代わって、財産の管理をすること。
例 生活費や入院日などの支払いや預貯金通帳や不動産権利証の管理、年金・障害手当金などの受け取り、ご本人のために必要であれば不動産売却など(※ただし、居住用不動産の処分は家裁の許可が必要です)など - ご本人の身上を配慮して、様々な事務作業を行うこと。
例 入院手続きや施設入所の手続き、介護サービスを受けるための手続き など - ご本人のために「代弁」すること
例 施設に入っているが、契約通りに、施設が介護等の対応をしない場合、後見人が施設側にしっかりと介護するように申し入れること など - 特に法定後見制度の場合には、ご本人がした不利になるような契約を後見人が取り消すことも可能です。
※任意後見人には、ご本人のした契約の取消権はございません。必要であれば法定後見に移行する申立も可能です。
- つまり、後見人にはご本人の「最善の利益」を求めるのが役目になります。
成年後見人、保佐人、補助人の権限の違い
財産管理や施設入所契約など、身上に関係する契約などを、成年後見人がご本人に代わって行います。また、日常生活に関する買い物などを除き、ご本人のした契約を、必要な際には「取消す」ことができます。
ご本人が重要な契約などを行うについては保佐人の「同意」が必要になります。仮に保佐人の同意を取らずご本人が重要な契約をした場合は、これを「取消す」ことができます。また、ご本人の了承のもとに、家庭裁判所が「財産管理などの権限」を与えることができます。
重要な契約などに「同意する権限」や、「財産管理などの権限」をご本人の同意のもとに、家庭裁判所が与えることができます。
成年後見制度の問題点
- 「成年後見人」が就任すると、ご本人の選挙権が法律上剥奪されてしまう。
- 医的侵襲を伴う医療行為に同意する権限を、後見人はもっていない。
- 財産の無い方の後見人になった場合、後見人の報酬は無いことになる。
- ご本人の死亡によって、後見人の権限はすべて消滅してしまう。 ただし、「任意後見」の場合は、契約に「本人死亡後の事務」として特約をつけると、葬儀の手配などが可能になります。
どのような方に、後見人になってもらうべきか
後見人になるための資格制限はありません。
ご自分の信頼する方になってもらうのが一番です。
後見人として必要な資質とは?
・財産管理などを行うため、高度な倫理感をもっていること
・本人を「受容」できること
・本人の言葉を「傾聴」できること
・そして、本人に「共感」できること
法定後見制度の種類
法定後見制度には、判断能力の程度により、「後見」、「保佐」、「補助」の3つに分かれます。
後見 | 保佐 | 補助 | |
---|---|---|---|
対象となる方 | 判断能力を欠く状況にある方 | 判断能力が著しく不十分な方 | 判断能力が不十分な方 |
申立てすることができる方 | 本人、配偶者、4親等内の親族、検察官、市町村長等 | ||
成年後見人等(成年後見人、保佐人、補助人)の同意が必要な行為 | 同意なし(本人に判断能力がないため) | 審判により「民法13条1項に定める行為」および「それ以外の行為 | 審判により「民法13条1項に定める行為の一部」 |
取り消しが可能な行為 | 日常生活に関する行為以外の行為 | 同上 | 同上 |
成年後見人等に与えられる代理権の範囲 | 財産に関するすべての行為 | 申立ての範囲内で定める「特定の法a律行為」 | 同上 |
必要書類
遺産分割とは、相続の開始によって、相続人の共同所有に属している相続財産の全部または一部を、各相続人の単独所有もしくは新たな共有関係に移行させる手続のことです。
相続の開始と同時に、被相続人の財産は相続人に移転します。相続人が1人の場合は、遺産は相続人の単独所有になり、分割の問題は生じませんが、相続人が数人ある場合は、遺産の共同所有関係が生じていることになりますので、いずれ各相続人に確定的に帰属させる手続が必要となります。
家庭裁判所によって書式が異なります。
司法書士に依頼している場合には司法書士が作成します。
- 財産目録
- 収支状況報告書
- 申立事情説明書
- 後見人候補者事情説明書
- 本人と親族関係を明らかにする親族関係の図面
- その他の必要書類(通帳や不動産の登記事項証明書など、事案によって必要な書類は異なります)
※司法書士に依頼している場合には司法書士が作成します。
- (本人以外が申し立てるときは)申立人の戸籍謄本、本人の戸籍謄本、住民票、登記事項証明書(東京法務局が発行する後見開始の審判等を受けていないか、あるいは既に受けているかについての証明書のことです)、診断書
- (候補者がいる場合は)成年後見人等候補者の戸籍謄本、住民票、身分証明書(本籍地の市区町村役場が発行する破産手続開始決定を受けていない旨の証明書のことです)、登記事項証明書(東京法務局が発行する後見開始の審判等を受けていないか、あるいは既に受けているかについての証明書のことです)