大田区の司法書士|石垣・松井事務所
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松井秀樹日記

成年後見11-推定的意思
2010.11.9 晴れ、そして美しい三日月夜

今回は後見業務で難しい問題をひとつ紹介します。
成年後見人には被後見人本人の意思尊重義務というものがあります。

では、被後見人本人が植物状態であった場合、後見人は本人の意思探求を
しなくてもいいのでしょうか?

この場合は、本人の意思など確認できっこないのだから、なすすべがない
という回答も十分ありえますが、しかし、本人の親族や、関係者から、あるいは
本人の書いた文書から、本人の意思を推測する道があるともいわれています。

つまり、本人を取り巻く人々などから、本人の「推定的意思」を判断していく方法です。

幸いにして私が後見人に就任している事案では植物状態になっている方は
これまでいませんでしたので、「推定的意思」を探求した経験がありませんが、
この言葉を知るにつけ、「人間の尊厳」をうしろで支えるとは、並大抵のことでは
ないと思う次第です。

ところで、みなさん。
「推定的意思」の探求とは、「人間の尊厳」に通じる言葉、行為でもあるのです。













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成年後見10-ハイリスク・ハイリターン

2010.11.5 すばらしい秋晴れ

後見人は被後見人本人の財産の管理権をもっています。
これは財産を処分することも含みます。
つまり、後見人は本人の財産に関する包括的な代理権をもってるといえます。

では、後見人は、後見人として就任して新たに株式投資を行うことが
できるのでしょうか?

これはできないと考えられています。株式投資とはハイリスク・ハイリターンの
運用を行うことを意味します。後見人はこのようなリスクの大きい財産管理を行って
はいけないのです。

数年前、東京家庭裁判所の後見センターは、判例タイムズという法律専門誌に
おいて、「後見人は資産を増やす義務はない」と明言しました。

先日、大学で講義をしていましたら、受講生から、では後見人は資産を
維持する義務はあるのか、という質問がきました。

そこで私は後見人には本人の資産について「善良なる管理者の注意義務」がある
という話をしました。さらに言えば、後見人は被後見人本人のために資産を正しく
使う義務があるといえます。

10月14日に日本証券アナリスト協会において講演しました。
日本橋の東京証券取引所の5階にある会場でした。私もこれまで様々な講演
をやってまいりましたが、証券取引所の上で講義をするとは想像してもみず、
とても光栄に感じました。

私はそこでも、証券マン・金融マンを前にして
「後見人はハイリスク・ハイリターンの運用はできません」
と高らかにお伝えしたました。

今日は、天高い、すばらしい秋晴れです。
あしたは三浦半島最高峰の大楠山に登ってみようと思っています。



















 

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成年後見9-親亡き後問題
2010.11.4 晴れ

みなさんは「親亡き後問題」という言葉を聞いたことがありますか。
これは、知的障害者や精神障害者、あるいは重度の身体障害者の両親が
亡くなったあとに、残された障害者がどう生きていくのか、その生活を誰が支援
していくのかという問題です。

これまで障害者である子の将来の心配のあまり、親が子と無理心中してしまう
悲惨な事件も数多く起こっています。

さて、成年後見制度はこのような親亡き後問題に対して活用できると考えれて
います。じつは私も成年後見制度が施行された平成12年に、この問題と
成年後見制度の活用法を論文にした経験があります。

ところで、その話はさておき、私はいつも大田区大森にある事務所の仕事を
終えると、京浜急行線の平和島駅まで18分ほど歩きます。そこから
電車に50分ほど乗って馬堀海岸駅で下車します。

じつはここ10数年、この平和島駅までの帰り道に「親子」と見受けられる
女性の二人連れとすれ違うことがたびたびあります。一人は70歳少し手前の年齢
の方、もう一人は40歳代と思われる方です。

若い女性は年上の女性にいつも手を引かれています。二人は寄り添い歩きながら
親しげに会話しています。しかし、若い女性は全盲と見受けられます。
私はこの二人にすれ違いうたびに、これも人間愛のうるわしい情景
なだあと思っておりました。たしかに人間愛であることに違いありません。
それが先日、すれ違った際、これまで考えなかったことが私の心に浮んでしまいました。

「ああ、この年上の女性が亡くなってしまったら、この全盲の女性は一人で
歩けなくなってしまう。今から一人で歩く練習をしないと悲しいことになる」

私はこの時、あの「親亡き後問題」という言葉をまた思い出した次第です。
人間の善意は時には、それを受ける者に、結果として不幸を与えることがあるのです。








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成年後見8-出雲
2010.10.26 曇り

10月23日(土)は島根県司法書士会で3時間講義しました。
内容は「後見人の倫理と問題事例」と「成年後見制度の現状と課題」です。
80人ほどの地元司法書士の方が受講していました。

ところで後見人の起こす不祥事は被後見人に決定的な打撃を与えて
しまいます。
成年後見人は被後見人に代わって包括的な財産管理権をもっています。
被後見人は判断能力がないのですから後見人を監視することができません。
したがって後見人になった者が高い高い倫理観をもっていないと
財産侵害などの大変な事件を惹き起こしてしまいます。

また後見人の不祥事は生活苦などで、自分の手元にある被後見人の財産
に手を出してしまうケースが多いように見受けられます。
ですので、後見人になっていなかったらこの人はここまでの犯罪を惹き起こすことは
なかったであろうと思われる事件もあります。

このようなことを考えていくと、他人様の財産管理を行う後見人になるには
強い覚悟が必要に思えます。

ところで24日は出雲を少し観光しました。出雲の民家はどれも大きくゆったり
した構えです。庭も広く野菜畑をもっています。ここはくらしに余裕がある
土地柄だと感じました。

出雲大社は雨模様でしたが、ここになぜ古代、このような王国が誕生していった
のか不思議に思いました。

空港で食べたシジミラーメンはおいしかったです。














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成年後見7-医療行為の同意
2010.10.22 曇り

少し時間ができたので、久しぶりに書きます。
成年後見人の医療行為の同意権についてです。
立法担当者の見解によると「医的侵襲をともなう医療行為の同意権」は、成年後見人
・保佐人・補助人・任意後見人にはないとしています。

ここでいう「医的侵襲をともなう医療行為」とは、「外科手術」などがその典型です。
厳密にはインフルエンザの注射を打つこともこれに該当します。
では、なぜこの同意権は成年後見人にはないのか。
これは平たくいうと「自分の身体にメスを入れることに同意できるのは自分しかいない」
という考え方がベースにあるからです。

ですので、たとえば本人の家族もこの同意権はないということになりますが、
医療現場においてはこれまでの慣行で、本人に意識がない、判断能力がない
状況下で家族の同意で手術等が行われています。

成年後見人には認められていませんが、しかし、家族も親族もいない方のケースでは
医師は成年後見人にこの同意を求めてくる例が多いのが実情です。
さて、あなたが後見人であったら、どう対処しますか?
法律上の解決はまだなされていません。

この問題につき、後日、また書くつもりです。

これから明治学院大学に一般公開の成年後見実務講座の講義に行きます。
そして、あしたは島根県の出雲で3時間講義をするため羽田から飛行機に乗ります。
出雲大社に寄ってこようと思います。

では、よき週末を。






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